進行した肝臓がん(肝細胞がん)の新しい治療法で、生存期間が2倍近く延ばせるという研究成果を、近畿大などのチームが発表しました。
肝細胞がんは再発しやすく、患者の9割は中等度進行がんに至ります。
中等度進行がん至った場合、治療は肝臓に栄養を送る動脈をふさいでがんを「兵糧攻め」にする局所治療を先に行い、抗がん剤を投与するのが一般的ですが、何度も兵糧攻めをすると肝臓全体が弱り、その後の薬の効き目が落ちる難点があります。
昨年、がん細胞を狙い撃ちする抗がん剤「レンバチニブ」が、中等度進行がんを含む手術不能の肝臓がん治療薬として承認されました。
開発に協力した近大の工藤正俊・消化器内科教授らは、肝臓へのダメージが小さい「レンバチニブ」で先に治療し、兵糧攻め治療につなげると効果が高まると推測。レンバチニブを先に使った30人と標準治療の60人を比較したところ、新治療の平均的な生存期間は37.9ヵ月で、標準治療(21.3ヵ月)の2倍近くに延び、がんが全て消えた人も4人いたとのことです。
参考:肝臓がん「生存期間2倍に」…近大など新治療法(2019年8月4日読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/science/20190804-OYT1T50124/
レンバチニブ(レンビマ)は2015年に根治切除不能な甲状腺がんを適応として発売され、2018年に肝細胞がんにも適応を拡大しました。切除できない肝細胞がんに最初に投与する一次治療薬としては10年ぶりの新薬です。一時治療でのシェアは2018年時点で8割に達しており、すでに多くの方に使用されてきました。
肝細胞がんの生存率は他のがんに比べて低く、新たな治療法の確立が望まれてきました。治療の順序を逆にするという今回の治療法で生存期間が2倍近くに伸び、がんが全て消えた人もいたとのことで、期待が高まります。低かった肝細胞がんの生存率を一気に伸ばすことができるかもしれません。今後の更なる研究に注目していきたいですね。