先日、週刊ダイヤモンドの特集記事について紹介しました。
その中でも「上場ドラッグ&調剤チェーンの売上高ランキング」がSNSで大きく話題になっています。今回編集部では、チェーンの売上高・利益・従業員数などについて独自に調査してみました。
ドラッグストア&調剤チェーン 売上高 TOP15
上の図が調剤&ドラッグストアチェーンの2018年度の売上高TOP15です。上位はドラッグストアチェーンが占めています。(HD:ホールディングス)
ドラッグストアチェーンのツルハHDとウエルシアHDは、売上高約7千8百億円と並んでおり、3位のコスモス薬品とは1千6百億円以上の大きな差が見て取れます。
さて、ここで注目すべきは5位のマツモトキヨシHDと7位のココカラファインでしょう。マツモトキヨシとココカラファインの2社は、2020年1月までの経営統合を目指しています。実現すれば売上高9千7百億円を超え、ツルハHDやウエルシアHDを2千億円近く引き離す巨大企業が誕生します。この2社の経営統合が調剤・ドラッグストア業界に衝撃を与えた理由がお分かりいただけるのではないでしょうか。
ドラッグストア&調剤チェーン営業利益ランキング
次に営業利益について見てみましょう。今回は、営業利益の金額、前年比伸び率、営業利益率について、それぞれランキングを作成しました。
営業利益額ランキング
企業名 | 営業利益(百万円) | |
1 | ツルハHD | 41,826 |
2 | マツモトキヨシHD | 36,028 |
3 | サンドラッグ | 35,233 |
4 | ウエルシアHD | 29,045 |
5 | スギHD | 25,817 |
6 | コスモス薬品 | 24,775 |
7 | アインHD | 16,067 |
8 | クリエイトSDHD | 14,241 |
9 | クスリのアオキHD | 14,147 |
10 | ココカラファイン | 12,915 |
ツルハHDが売上高では並んでいたウエルシアHDに対して100億円以上の大きな差を付けていることがわかります。
営業利益の前年比率ランキング
企業名 | 前年同期比増減(%) | |
1 | クスリのアオキHD | 19.3 |
2 | コスモス薬品 | 8.9 |
3 | マツモトキヨシHD | 7.3 |
4 | キリン堂HD | 5.0 |
5 | スギHD | 4.3 |
6 | ツルハHD | 4.0 |
7 | クリエイトSDHD | 2.7 |
8 | ウエルシアHD | 0.8 |
9 | サンドラッグ | -2.3 |
10 | ココカラファイン | -5.8 |
各社が軒並みに営業利益が伸び悩んでおり、前年度に比べて減らしてしまった企業もある中で、クスリのアオキが大きな伸びを見せていることは注目に値するのではないでしょうか。
営業利益率ランキング
企業名 | 営業利益率(%) | |
1 | マツモトキヨシHD | 6.3 |
2 | サンドラッグ | 6.0 |
3 | アインHD | 5.8 |
4 | クスリのアオキHD | 5.6 |
5 | ツルハHD | 5.3 |
6 | スギHD | 5.3 |
7 | クリエイトSDHD | 5.0 |
8 | クオールHD | 4.9 |
9 | コスモス薬品 | 4.1 |
10 | 総合メディカルHD | 3.7 |
売上高は5位だったマツモトキヨシが営業利益額では2位、営業利益率では1位、加えて前年度比で7%以上の営業利益の伸びを見せるなど、好調な業績が見て取れます。
調剤チェーンとドラッグストアチェーンを比較すると、調剤チェーン4社のうち3社が営業利益率TOP10にランク入りしており、調剤業務の利益率の高さが伺えます。
医薬品、食品、化粧品・・・ドラッグストア各社の売上の内訳
ここまで各社の売上高や営業利益などを見てきましたが、各社はどのようなものから売上を得ているのでしょうか?
各社の売上高に占める「医薬品(調剤含む)」「食品」「化粧品」の割合を示したのが下のグラフです。(スギHD、サンドラッグは不明のため非掲載)
当然ながら調剤チェーンの4社は医薬品の割合が大きく、ドラッグストアチェーンとは全く異なる傾向にあります。
ドラッグストアチェーンの中で特に目を引くのはコスモス薬品で、ドラッグストアでありながら食品の割合が半分を超えています(56.3%)。カワチ薬品やクリエイトSDHDも食品の割合が大きく(カワチ薬品:46.2%、クリエイトSDHD:39.4%)、ドラッグストアがスーパーマーケットなどとも競合する存在であることを示していると言えるのではないでしょうか。
一方、マツモトキヨシHDやココカラファインは、化粧品の割合が大きいことが分かります(マツモトキヨシHD:39.5%、ココカラファインHD:27.0%)。経営統合を目指しているこの2社の特徴が、今後どのような相乗効果を生むのか期待ができそうです。
今回各社について調べてみて、売上高だけでなく営業利益や売上高構成比率なども見ていくことで、各社それぞれに個性があることが分かりました。絶えず変化を続けていく薬局&ドラッグストアチェーンにこれからも要注目です。
参考資料:各社の有価証券報告書
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