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これがホントの薬剤師業界の実情?!〜週刊ダイヤモンド「薬局戦争」〜

これがホントの薬剤師業界の実情?!〜週刊ダイヤモンド「薬局戦争」〜

SNSでも話題となっている、9月14日発行の週刊ダイヤモンド。今回は、激変しつつあるドラッグストアや薬局の最前線について特集が組まれています。

本特集で筆者が最も注目したのが、薬学部生の主な就職先を「モデル年収」「初任給」「就職難易度」「やりがい」で評価した記事です。「モデル年収」と「初年給」は具体的な数字が出ており、「就職難易度」と「やりがい」は3段階で評価されています。

薬学生の主な就職先
●製薬会社の研究・開発職
●MR(医療情報担当者)
●病院・診療所
●薬局
●ドラッグストア

病院・診療所、薬局、ドラッグストアは就職難易度が低い?

薬学生のうち約7割は病院・診療所、薬局、ドラッグストアに就職します。
本特集では、病院・診療所、薬局、ドラッグストアの就職難易度はいずれも星1つと評価されています。

しかし、都心部では充足傾向にある薬局が存在することや、少ない募集人数に対して多くの応募が集まるブランド病院があることなどを考えると、この就職難易度の評価については疑問が残ります。

病院においては、臨床の知識やチーム医療の経験を積むことができる点が薬学生にとって魅力となっています。特に、病棟服薬指導に携わる機会の多い、200床以上・急性期の病院は多くはなく、公務員試験に合格する必要のない民間の病院となると、さらに数は限られます。
病床数の多い、急性期の民間病院への就職を希望する薬学生にとっては、病院への就職難易度は非常に高いので、やはり「病院」や「薬局」という単位で就職難易度を評価することは難しいのではないかと思います。

また、やりがいについては以下のように評価されていました。

就職先 やりがい
病院・診療所 ★★★
薬局 ★★
ドラッグストア

臨床を学べる病院は最高評価。その次に薬局、ドラッグストアとなっています。この順番についてはある意味予想通りの結果でした。
一方、薬剤師として働くやりがいというのは、会社の方針や制度、上司や同僚によっても左右されるのも事実です。施設区分だけでやりがいを評価することは少し違うのではないかと思います。
しかし実際に就職、転職先を探すという観点から言うと、情報不足の問題があるため、ある意味では施設区分でしか「やりがい」を評価できない可能性が否定できません。

一部医療機関では人手不足などの理由により、薬剤師が欲しい情報を表に公開していないケースが多々あります。一般には知られていないものの、その一部の人たちだけが知る「やりがいに繋がる情報」さえ表に出れば、個々の医療機関についてのやりがいの評価がそれぞれ把握できるのではないかと思います。

ドラッグストアは本当にやりがいのない職場なのか?

やりがいの項目で最低評価の星1つだったドラッグストア。特集では年収や奨学金返済補助のために就職する学生が多数であると紹介されています。

これはかなり疑問が残る評価です。ドラッグストアで働くメリットは、OTCの知識を付けられることですが、これは近年のセルフメディケーションブームを考えると、非常に大きなメリットになりつつあります。
特に先日ニュースになった、健康保険組合連合会による「市販薬と同じ成分の花粉症治療薬」を保険適用外とする提言が採用されれば、市販の花粉症治療薬の需要が伸びることが予想されます。医療費問題が謳われていることを考えると、今後さらに、薬剤師にOTC医薬品の知識が求められる可能性は高いと考えられます。

また、昨今では、ドラッグストアでは調剤併設の店舗や、在宅も行う調剤薬局を持つ店舗が増えています。薬剤師さんの中には、「最低でも調剤ができないのは薬剤師としてありえない」という考えの持ち主が少なくないことを考えると、OTCと調剤薬局の両方の経験を積めるドラッグストアは、薬剤師の就職先としてはとても価値のある職場だと言えます。
年収や働き方などの条件が比較的良い中で、様々な経験ができる職場にやりがいを見出すことができる薬剤師は多いはずです。

時代の変化に合わせて役割が変わるだけ。変化に合わせられるかが重要

このところ調剤報酬改定が近づくたびに、薬剤師不要論が活発になります。その度に、薬剤師の需要が落ち込むことが不安視されますが、その心配はあまりないと考えています。
もちろん、機械化、IT化が進めば進むほど、人がやらなくてもいい業務が機械に変わることは間違いないはずです。だからと言って、薬剤師の業務は無くなるのかというと、そうではなく、薬剤師の業務内容が変わっていくだけではないでしょうか。

薬剤師は、セルフメディケーションや在宅業務、臨床、スポーツなど職能を発揮できる分野がたくさんあります。
今後、薬学部で学んだことをどのように生かすか、何を軸として働いていくのかを考えれば「薬剤師不要論」という逆風を上手くかわせるのではないかと思うのです。

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