“クオリティー・オブ・ライフ”をコンセプトに、医療・福祉をジョイントさせた街づくりを提唱する日本メディケア(株)。現在、薬剤師や栄養士やビジネス職などと密に連携を取りながら、在宅医療に特化した強固な組織作りを目指しています。今回は同法人の代表取締役であり、NPO法人「医療福祉メディケアネット」の代表も務める三浦 嘉統氏に会社の特徴や今後の展開、採用についてお話を伺いました。
普通の薬局はいらない。在宅医療に特化した事業を展開
日本メディケア(株)では都内に調剤薬局を3店舗出店し、日本発のスポーツリハビリテーション事業を行う「(株)メディキュアーズ」や「あんしん介護株式会社」なども展開しています。3店舗中、2店舗で在宅医療を実施。現在、8割は個人宅であるものの、施設在宅数を増やす努力をしており、今後は施設と個人宅の割合が逆転する可能性もあると言います。
また、当社では在宅医療を行う患者様宅に薬の飲み忘れや飲みすぎを防止する目的で、無料で「服薬ロボット」を貸し出しており、患者様はもちろんご家族の介護の助けとなっています。さらに通常のレベル7よりも100倍清潔なレベル5の無菌調剤室を完備。薬剤師の他にも栄養士やケアマネジャー、福祉用具専門相談員を配置することで、細やかな対応が可能です。
三浦氏「健康館薬局では薬膳弁当お届け・見守りサービスを行っています。東京栄養食糧専門学校と提携し、栄養バランスの良いオーガニック弁当を作りました。週1回〜5回、ご自宅までお弁当を届けることで独居の方の見守りや食事指導、健康管理を行っています。」
さらに健康館薬局ではオーガニック野菜の販売やAGEs(最終糖化産物)の無料測定も行うことができます。今後は皮膚や血管年齢の測定機器の設置も考えているそうです。
三浦氏「健康館薬局と大岡山調剤薬局は在宅医療特化型で年中無休。今後は西新宿薬局でも在宅医療を実施していきます。医療人というのは人が病気になる時に必要となる存在です。病気になることは予想できないし、病気は待ってくれない。だから、いつでも患者さんの対応ができることは医療人としての務めだと思います。」
働く環境:責任の所在を明確化。それぞれの職能を磨ける環境
当社の場合、ほとんどが中途採用の社員で構成されています。特徴的なのは、薬剤師以外にも栄養士や福祉用具専門員、介護福祉士や柔道整復師などの他職種が大勢いること。立場が違うことで見えてくる物事の考え方の違いなどを学ぶにはとても良い環境です。
また、薬局運営についても当社の特徴が顕著です。他の薬局では薬剤師が薬局長となり、店舗運営の責任も持つことが多いものの、当社では薬については薬剤師に、店舗運営については事務職に責任を持たせています。
三浦氏「レストランでいうと、オーナーシェフ型のお店とファミリーレストラン型の違いですね。当社はファミリーレストラン型。薬剤師は店舗運営のノウハウを磨くよりは、医療の知識や技術を磨いた方が良いと考えています。マニュアルを作成した上で、事務職と薬剤師の責任の所在をはっきりさせることは、それぞれの職能に見合ったスキルを磨くことにつながり、効率の良い事業運営が実現します。」
そして当社では、調剤薬局の運営における最大の課題を「調剤のミスをなくすこと」とし、独自の工夫を行っています。まず、調剤を行った後の最初の監査は事務員が行います。その後、バーコードによる機械監査を行い、さらに調剤した薬剤師とは別の薬剤師が監査を行い、投薬をします。また、レセコンへの入力など、事務作業についても、確認作業をしっかりと行っています。事務員が入力した後に薬剤師2名と、入力していない事務員が監査を行うことでミスを極力減らす努力をしています。
三浦氏「かつて、東京大学医学部付属病院の病院薬剤師が薬学会で調剤ミスについて発表したことがあります。その発表によると、調剤のミス率は5%。20回に1回、ミスが発生するということでした。真面目で優秀な人達が、一生懸命注意しながら調剤をしても5%のミスが発生するということは、試験に例えれば、一生懸命勉強しても95点しかとれないことです。ミスは精神論では解決しない。“ミスゼロ”にするための仕組みづくりが必要です。問題は、薬剤師同士が同じ思い違いをすること。それがわかっているからこそ、調剤スピードよりも、“ミスゼロ”が一番というのをモットーに店舗運営を行っています。」
薬剤師のキャリアパスについては、認定薬剤師を取得した後、かかりつけ薬剤師となるケースが多いと言います。その後、管理薬剤師になる方とそうではない方に分かれます。管理薬剤師の上は経営者となり、それぞれの思考に見合ったキャリアが用意されています。
そして、当社ではMPラーニングを利用した年間30単位の研修が義務付けられています。正社員はもちろん、パートの場合も研修を受けることで給与に反映されます。職種、勤務形態にかかわらず、常に学ぶ姿勢が求められる環境です。
<1日の業務の流れ>
9:00~9:10 | 薬局の清掃 |
9:10~9:15 | 引継ぎ事項の確認 |
9:15~9:30 | 薬歴の未記載チェック |
9:30~ | 不足薬の補充、調剤業務、在宅医療業務 |
採用のポイント:医療人としての自覚を持っているか
医療人の仕事は、健康について問題を抱えている人を助けること。当社では医療人としての自覚を持っているかどうかを重視した採用を行なっています。
三浦氏「人には病気になりやすい時間帯というものがあります。それは血中ステロイドホルモンが低い夕方からの時間帯です。人が病気になった時にこそ医療人がいる意味が出てくる。それゆえ、ワーク・ライフ・バランスを重視したいという思考の方は当社では合わないと思います。」
この考え方は在宅医療に特化した2店舗が年中無休であることに反映されています。さらに大岡山調剤薬局では平日は21時まで開局。地域住民の駆け込み場となっています。
面接での質問項目としては、志望理由などの基本的な質問の他に、人生の目標、どんな人物になりたいのかという質問もしています。また、目標を聞いた上で実現するための計画も聞くことで、自己管理能力や時間管理能力があるかというのも見ています。特に時間管理能力については業務を行う上で非常に重要な能力のため、話を聞いた上で当社において活躍できる人物かどうかを判断しています。その他には、面接の場でどんな「笑顔」が見られるのかというのも重視しているそうです。
三浦氏「初対面の人に自然な笑顔を見せられる人は、自分に自信を持っている人が多いと考えています。さらに自分に自信がある人は懐の深い人が多いという印象です。もちろん、全員がそうだとは思っていませんが。とにかく自然な笑顔が出るのかどうかを見ていますね。患者さんの相談にのる医療人だからこそ見ています。」
店舗数の増加と在宅特化を目指す
今後は西新宿薬局での在宅医療の実施を皮切りに、在宅に特化した組織づくりをしていきたいと考えているそうです。また、現在、調剤薬局以外でもケアプラン作成の会社や、スポーツリハビリテーション事業を行う会社なども運営しているため、他職種と連携をしながら満足度の高い在宅医療の提供を行っていきたいと三浦氏は言います。
三浦氏「以前運営していたメディケア阿佐谷薬局は、先日、別の会社に譲渡しました。理由は門前薬局だったからです。皆さんが知っての通り、これからの時代は在宅医療のニーズが高まります。当社としては門前薬局を運営するメリットはないため、今後は、在宅医療や福祉分野に力を入れていきたいと思います。」
コンサルタントの目線
ファーマキャリアコンサルタントの小滝です。
日本メディケアは調剤薬局以外にもケアプランの作成やスポーツリハビリ事業を行うグループ会社も運営しているため、医療・介護の総合的なアプローチができる会社です。取材に応じていただいた三浦氏は、コンビニエンスストアとドラッグストアを掛け合わせた店舗を日本で初めてオープンした他、日本初のメディカルモールを創設した人物。当社設立後も日本初のスポーツリハビリテーション事業を運営する会社を設立するなど、時代を見据えた会社経営を行っています。私は、三浦氏から様々なお話をうかがう中で、印象に残った言葉がありました。
“「フラクタル理論」は人の採用にも通じるところがある。”
フラクタル理論とは不規則な図形に見られる自己相似性についての理論です。いわば、ものごとは繰り返されるということでもあります。三浦氏は採用の話の中で早期離職を繰り返す人はうちに来ても短期で退職となる傾向だと話していました。そのため、短期離職を繰り返している方の場合は、採用を躊躇することもあるそうです。フラクタル理論がそのまま採用にも通じることなのかは、私はわかりませんが、繰り返し起こることには何か意味があるような気がしました。この他にも様々な数学の理論についてお話をしてくださった三浦氏。何気ないお話の中でも経営者としてのスピリットを垣間観ることができました。
当社は、医療人としての覚悟を持ちながら知識や技術を磨き、長期的に働いていきたいという方には最適な環境が整っています。また、在宅医療の技術を磨きたい方や、福祉分野からのアプローチもしていきたいと考える方には良い環境だと言えます。そして能力さえあれば、薬剤師に限らず事務職でも経営の一旦を担うことができるそうなので、将来、経営者を目指していきたい方もぜひ一度ご検討ください。
日本メディケアのデータ
●日本メディケア株式会社 (2019年11月現在) |