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合理性を追求しながら、さらなる医療の質の向上を目指す<東邦大学医療センター大森病院>

合理性を追求しながら、さらなる医療の質の向上を目指す<東邦大学医療センター大森病院>

「良き医療人を育成し、高度先進医療の研究・開発の推進をすることにより、患者に優しく安全で質の高い地域医療を提供する」を理念としている東邦大学医療センター大森病院。今回は、薬剤部部長の西澤健司先生に薬剤部の仕事と今後の取り組み、そして採用についてお話を伺いました。

東邦大学医療センター大森病院の特徴:
・特定機能病院、第三次救急指定病院、地域がん診療連携拠点病院、災害拠点病院、エイズ診療拠点病院、東京都小児がん診療病院
・あらゆる対象に対応する高度先進医療を提供
・東京都南部地域の中核病院として、患者さんに優しく安全で質の高い医療の実現を目指している

 

東邦大学医療センター大森病院 薬剤部部長 西澤健司氏

薬剤部部長 西澤健司氏

東京薬科大学卒業後、東邦大学大学院後期課程終了(博士/薬学)。
1983年に日本医科大学付属病院薬剤部に入局し、その後救命救急センターへ。2005年より東邦大学医療センター大森病院薬剤部へ入局。2011年より薬剤部長に就任。

 

全国でも導入例が少ない周術期管理を実施

当院では1970年にTDMが必要とされる病棟から薬剤師を配置しました。2000年代には全病棟への薬剤師の配置が完了し、その後手術室、ICU、救命救急、NICU、外来化学療法室にも薬剤師を常駐させています。また、TDMも積極的に行っており、高速液体クロマトグラフィー(HPLC法)での解析が必要なものなどに関しては、薬剤部で測定を行っています。特に免疫抑制薬のTDMの件数は多く、さらに昨今では、TDMによる抗菌薬の適正使用の推進にも取り組み、効果を上げています。
薬剤部として力を入れている分野の一つは外来化学療法室。レジメンのチェックや注射薬はもちろんのこと、抗がん剤の内服薬を対象として薬剤師外来(お薬サポート外来)も行なっており、患者さんの外来診療にたずさわることで、がん患者の治療の質の向上と医師の負担軽減を図っています。
また、入退院センターでも薬剤師が深く関与しており、薬剤部として力を入れている分野の一つです。

西澤先生「年に数例、オペの日程や入院日が決まっているのにも関わらず、服用している薬のせいでその日程がキャンセルになる事例がありました。患者さんの負担はもちろんのこと、現場の負担は計り知れません。そこで薬剤師が事前に服用薬の確認をすることにしました。」

この取り組みは周術期管理の一環としても行なっています。当院では2011年度より、周術期管理チームを設立し、2013年度より麻酔科術前外来に薬剤師を配置し、OTCや内服薬などの常備薬の確認や、麻酔科医に対する休薬すべき薬剤と休薬期間に関する情報提供を行なっています。
本取り組みはまだ、全国でも限られた病院のみでしか実施されておらず*1、当院の特徴の一つとなっています。これまでは医師が一人で行なってきた業務を薬剤師や看護師、歯科衛生士などチームで行うことにより、医師の業務負担の軽減はもちろんのこと、周術期医療の質の向上につながっています。
*1:導入率13%(「周術期管理チーム認定制度 2017 年度実態調査」より)

働く環境:全ての診療科の薬を把握した上で、病棟業務などを学ぶ

採用は新卒採用が基本となり、東邦大学医療センター大森病院、大橋病院、佐倉病院での合同採用で、毎年2・3名を募集しています。入局後は3病院内で異動がありますが、異動時期や頻度に決まりはありません。入局後1、2年はセントラル業務が中心で、2年間で全ての診療科での採用薬を把握します。2年目からは病棟業務の研修が始まります。3年目以降は専門薬剤師などの取得に向けて経験を積んでいきます。なお、当院では年2回人事評価制度があり、1年後の目標を決めたのち、半年後に効果測定を実施。さらに半年後に目標達成したかどうかを評価しています。

採用のポイント:大学病院の薬剤師としての責務を理解しているか

求める人物像は大学病院という側面から、研究・教育・実務を熱心に取り組むことができ、コミュニケーション能力が高い人だと言います。

西澤先生「“コニュニケーション能力”と言っても、具体的に何を指すかは医療機関によって異なります。当院の場合は会話をする中で、質問に対して瞬時に的確に答えられるかという点と傾聴力を重視しています。」

昨今は、面接対策に力を入れている学生が多く、学生の本質を見ることが難しくなっているそうです。それゆえ、面接では面接対策本などには掲載されていない質問を投げかけています。興味関心のあるもの、人生、友人関係などについての質問をすることで学生の本質的な部分を紐解いていくと言います。
これまで採用をしてきた中で一番評価が高い薬剤師は、実務の大切さを理解しながらも実務だけに流されず、研究や教育に力を入れている方でした。大学病院の薬剤部で働く意味を理解し、どれだけ成果を出すことに熱心になれるかが問われます。

医師と協力することで、外来患者の治療の質を上げる

薬剤部として今後力を入れていきたい分野は、外来患者との関係性の構築です。現在、外来患者は病院そのものとは接点があるものの、薬剤部としての接点はありません。薬剤部としては、たとえ院外処方であっても病院に来院した患者さんとの接点を持ち、治療の質を高めていく手助けをしていきたいと考えています。

西澤先生「喘息の吸入薬を処方された場合、患者さんは保険薬局で薬をもらいますが、吸入薬の使用方法は保険薬局それぞれで異なる説明をしている可能性があります。医師と共に治療にあたり、薬剤部が吸入薬の説明を行うことで、治療の質を高めていきたいと考えています。」

また、インスリンの使用方法については、現状、医師と看護師が指導を行っています。医師の働き方改革を進めるための「タスクシフティング」を実行するためにも、インスリンの打ち方に関しても薬剤師が指導を行う体制を作りたいと考えています。

西澤先生「当院には内服薬の抗がん剤を使用している患者さん向けの薬剤師外来(お薬サポート外来)があります。この場所を利用して吸入器の説明などをしていけたらと考えています。」

そして、将来的には外来ブースに専任の薬剤師が常駐し、服用薬の確認ができる体制づくりを目指していると言います。外来患者と薬を通してコミュニケ―ションを取ることで、関係性の構築を目指しながら、さらに減薬につながる提案を行い、患者さんの生活の質を高めていく一助になりたいそうです。

コンサルタントの“目線”

ファーマキャリアコンサルタントの久島です。
東邦大学医療センター大森病院は病床数948床(一般912床、精神36床)を持つ、23区南部の高度専門医療を担っている病院です。早くから病棟に薬剤師を常駐させ、現在は1病棟1名という体制で業務にあたっています。また、認定・専門薬剤師を育てるために、領域が近い病棟の各担当を1つのグループとするグループ制を導入しています。さらに既認定者と認定取得を目指す人を同じグループにすることで病棟を入れ替わりで担当できるようにしています。これにより、より多くの薬剤師に認定・専門薬剤師の取得機会を与えることができるうえ、業務の幅も広げることができます。またセントラル業務を行う薬剤師に対しても、セントラル以外の業務を組みあわせることで、患者さんや他職種と関わる機会をつくっています。

薬剤部の西澤先生は大変気さくな方で、終始なごやかな雰囲気で取材が進んでいきました。
薬剤師が69名在籍する薬剤部は明るく向上心のある方が多く、同僚はもちろん、他職種との交流も多いそうです。また、職場の雰囲気としては、常に新たな意見が飛び交う風通しの良い職場で、医療体制を常に良い形に刷新していくカルチャーが根付いています。
取材を通して思ったことは、常に進化をし続ける組織に身を置くことは、技術や知識だけではなく、「人間性」を向上させることにもつながるのではないかということでした。「人」との関わり合いを学ぶのは医療の担い手としては大切なこと。当院で働くことのメリットの一つだと思いました。

東邦大学医療センター大森病院のデータ

●東邦大学医療センター大森病院
●所在地 〒143-8541 東京都大田区大森西6-11-1
●創立 1947年 帝国女子医学専門学校付属病院として開設
●病床数 948床
●従業員数 2006人(薬剤師69人)
●平均年齢 不明
●男女比 不明
●採用実績校 東邦大学、日本大学、星薬科大学、明治薬科大学、千葉大学、慶應大学、東京薬科大学、東京理科大学、城西大学、横浜薬科大学、城西大学 など

(2019年11月現在)

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