薬剤師のためのキャリア・働き方情報をお届け!

コロナ禍のオンライン診療解禁から考える薬剤師の職能発揮2 ~オンライン服薬指導~

コロナ禍のオンライン診療解禁から考える薬剤師の職能発揮2 ~オンライン服薬指導~

新型コロナウイルス感染者が増加するなか、初診患者のオンライン診療が解禁し、オンライン服薬指導の条件も緩和されました。
オンライン診療や、オンライン服薬指導の普及は、薬剤師の働き方にどのような変化をもたらすのでしょうか。前回の記事 <コロナ禍のオンライン診療解禁から考える薬剤師の職能発揮1 ~オンライン診察体験記~>では、実際にオンライン診療を受診した流れから、メリットとデメリットを考察しました。今回はオンライン診療を終えてから薬を受け取るまでについて、確認していきます。

オンライン診療後、服薬指導もオンラインで受けるには

オンライン診療で処方される処方箋を元に、調剤薬局での服薬指導もオンラインで受けることができます。オンライン服薬指導は、新型コロナが広がる前から遠隔服薬指導という表現を用い、限定的な条件下で行われてきました。

歩き出しているオンライン服薬指導~日本が目指す未来の医療とは~ (2019/10/30)

地域や疾患が限られているため、なかなか身近ではなかったオンライン服薬指導ですが、新型コロナウイルスに関する特例措置により利用が広がりそうです。

オンライン服薬指導の方法については現在、厚生労働省による令和2年4月10日の事務連絡に基づいて進行しています。服薬指導をオンラインで受けるには、あらかじめ受診した医療機関から直接、希望する薬局へ処方箋をFAX等で送付してもらう必要があります。その際、処方箋の備考欄に「0410対応」と記載し、医師はカルテに送付先の薬局を記載します。処方箋の原本も薬局に送付します。

患者が新型コロナウイルスに感染しており自宅や宿泊施設で療養中の場合は、処方箋の備考欄に「CoV自宅」または「CoV宿泊」と記載します。

オンラインでの服薬指導後は、確実に受け取りができる配送方法で薬を発送し、患者が受け取ったかどうかを電話等で確認することとあります。温度等の管理が必要な薬はそれに応じた配送方法を利用し、場合によっては薬局の従業員が届けたり、家族に来局を求めるなどの工夫が求められています。

オンライン診療とオンライン服薬指導は必ずしもセットではない

同じオンラインでも、診療と服薬指導で異なる点は、実際に物の受け渡しがあることです。処方箋はFAXやメールで瞬時に届けることができても、薬そのものは実際の移動が必要です。そのため、オンライン診療の場合は「時短」のメリットを感じましたが、服薬指導の場合はオンラインの方が受け取りに時間がかかります。

オンライン診療後の薬の受け取り方法には、複数のパターンがあります。
外出せず最短で薬を受け取るには以下の手順が考えられ、最速で当日手に入ります。


オンライン診療 ⇒ 自宅近くの薬局に処方箋FAX送付 ⇒ オンライン服薬指導 ⇒ 薬局従業員による配送


配達は配送業者に依頼することが多いと考えられるので、配送を組み合わせると以下のようなパターンがあり、薬の受け取りは最短で翌日です。(離島等を除く)


オンライン診療 ⇒ 処方箋を患者宅に郵送 ⇒ 自宅近くの薬局で直接受け取り

オンライン診療 ⇒ 門前薬局や患者指定の薬局に処方箋FAX送付 ⇒ オンライン服薬指導 ⇒ 薬を配送


その他、院内処方のクリニック・病院の場合も、診療後の発送で最短翌日に受け取ることができます。

在宅勤務と相性の良いオンライン診療ですが、薬の受け取りに関しては自宅近くの薬局を利用することも可能です。

実際、オンライン診療後に「0410対応」で薬局にFAXで処方箋を送付してもらったあと、直接薬局に取りに行くというパターンも多いそうです。

オンライン診療 ⇒ 病院から薬局へ処方箋をFAX送付 ⇒ 薬局で本人が直接受け取り

処方箋や薬を郵送する時間が必要ないので早く薬が手に入り、薬局での待ち時間も減らすことができます。


普段は電車で大学病院などに通っていて、今は電車での移動を避けたいという理由からもオンライン診療が選ばれています。それに対して、調剤薬局は住宅地にも多く、自宅近くの薬局を選択しやすいです。ちょっと足を伸ばしてデパートやショッピングセンターに行くのは自粛していても、近所のスーパーやコンビニには気をつけて行く、といったことと同様です。

そしてその場合、薬剤師が患者にとって唯一、直接会って話す医療従事者となります。診療がオンラインで行われたからこそ、より一層、薬剤師が対面で伝えるメリットが増すのではないでしょうか。

オンライン服薬指導の導入で薬局はどう選ばれるのか

もちろん、スーパーの代わりに食料品や日用品もネット通販を利用するように、薬局での服薬指導も全てオンラインで行いたいというニーズもあります。

Amazonなどネット通販の普及によって地域の小売店が苦境に立たされたように、オンライン服薬指導の解禁によって薬局の経営に影響があるのではないかと心配する薬剤師もいるかもしれません。

厚生労働省の指針では、オンライン服薬指導も実際に通える薬局での実施が望ましいとしています。オンラインメインの薬局に全国のユーザーが集中するということや、遠方の薬局にあえて依頼するということは、現時点では考えにくいことです。

むしろオンライン化に取り組むことが、今後は「門前薬局だから」「家から近いから」といった限定的な立地にとどまらず、「オンラインですぐに相談ができて、いざとなったら行ける距離にある」といった少し広い範囲の地域からも、かかりつけ薬剤師やかかりつけ薬局として選ばれる入り口となれる可能性があるのではないでしょうか。

 

本事務連絡に基づき電話や情報通信機器を用いて服薬指導等を行う場合であっても、患者の状況等によっては、対面での服薬指導等が適切な場合や、次回以降の調剤時に対面での服薬指導等を行う必要性が生じ得るため、本事務連絡に基づく取扱いは、かかりつけ薬剤師・薬局や、当該患者の居住地域内にある薬局により行われることが望ましいこと。 (厚生労働省 令和2年4月10日 事務連絡より)

大手調剤薬局やドラッグストア調剤部門の新型コロナ対応

4月10日通知の内容がスタートして間もない現在、大手調剤薬局の対応を見てみると「電話」での服薬指導は始まっています。WEBサービスやアプリなど、インターネットでビデオ通話をする「オンライン服薬指導」は、限られた店舗のみという現状のようです。初診でオンライン診療を利用した場合に、服薬指導が電話のみになってしまうのは心もとなく感じるかもしれません。

2020/4/22時点の各社WEBサイト情報より

薬局名

服薬指導の方法

配送方法

支払い方法

アイン薬局(アインホールディングス)

電話(全店)
オンライン診療アプによるビデオ通話(15店舗)

ゆうパック

・後日来局時支払いもしくは口座振込
・アプリ使用店舗でクレジット決済(15店舗)

日本調剤

電話(全店)
ビデオ電話(5店舗)

薬局指定の宅配業者

薬剤を配送する際に、振込用紙を同梱

クオール薬局(クオールホールディングス)

電話(全店)
オンライン診療アプリによるビデオ通話(一部)

宅配便

・口座振込または、後日来局時支払
・アプリ使用店舗でクレジット決済(一部)

さくら薬局(クラフト)

電話等

郵送または宅配業者による配送

ご持参いただくか振込み

ウエルシア薬局

電話

・店舗受け取り
・(郵送も可)

 

スギ薬局

電話

・店舗受け取り
・宅配便

銀行振込等

オンライン診療システムを導入している店舗では、画面を見ながら服薬指導を受けることができ、クレジットカード決済にも対応しています。
中小規模の薬局でしたら、まずは無料のオンライン会議ツールで少しずつ初めてみるなど、導入に時間のかからない方法で試してみるもの良さそうです。

コロナ以後のオンライン服薬指導

新型コロナウイルスから守るためのオンライン服薬指導。
「配送の時間が必要」「送料がかかる」「対面より情報量が少なくなる」「ビデオ通話のための情報通信機器準備が必要」といったコストやデメリットはありますが、今は非常事態のためメリットを優先して各社導入が検討されています。

外出自粛によって様々な変化がある現在ですが、今後一般的にもオンライン服薬指導が広い範囲で認められた場合、薬剤師の仕事はどのように変わるのでしょうか。

また、そもそもオンライン診療で処方して問題のない薬なら、初めから薬局で受け取れるような仕組みも考えられそうです。

本シリーズ最終回では、薬剤師が活躍する未来について考察します。

コロナ禍のオンライン診療解禁から考える薬剤師の職能発揮3 ~薬剤師の活躍とポストコロナ~

関連記事

コロナ禍のオンライン診療解禁から考える薬剤師の職能発揮3 ~薬剤師の活躍とポストコロナ~

診療はオンラインでも、薬は近所の薬局に直接取りに行くケースも多い現状。そしてその場合、患者と対面で接する唯一の医療従事者は薬剤師です。しかしそれならば、初めから薬剤師に相談し、OTC薬や零売を利用すればよい症状も多いと…

コロナ禍のオンライン診療解禁から考える薬剤師の職能発揮1 ~オンライン診察体験記~

新型コロナウイルス感染者が増加するなか、初診患者にも解禁されたオンライン診療。薬剤師の働き方にどのような変化をもたらすのか、オンライン診療受診の体験談とともに考察します。
わずか10分程で受付から支払いまで。オンライン診療の流れ…

 

歩き出しているオンライン服薬指導~日本が目指す未来の医療とは~

スマートフォンやタブレットを使用し、薬局に患者が来局しなくてもリアルタイムで服薬指導を行うオンライン服薬指導。ここで注目すべきなのは、厚生労働省はオンライン服薬指導という言葉の使用を避け、あえて遠隔服薬指導とういう言葉を使用しているというところです…

 

初診でもオンライン診療可能に 新型コロナウイルス院内感染予防

調剤薬局でも透明アクリル板の設置広がる 新型コロナ対策

 

参考:
●新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて(令和2年4月10 日事務連絡 厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000621247.pdf

●新型コロナウイルス感染症患者の増加に際しての電話や情報通信機器を用いた診療や処方箋の取扱いについて(令和2年2月 28 日事務連絡 厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000602426.pdf

●医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(オンライン服薬指導関係)(令和2年3月31日 厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000621247.pdf

●新型コロナウイルス感染症拡大防止のための電話や情報通信機器を用いた服薬指導及びお薬の配送について(2020/04/13 アインホールディングス)
https://www.ainj.co.jp/Portals/0/ir/news/20200413_newsrelease.pdf

●新型コロナウイルス感染拡大防止のための全国の当社薬局における電話等による服薬指導とお薬の配送につきまして(2020/04/14 日本調剤)
https://www.nicho.co.jp/corporate/newsrelease/20200414_nr2/

●全薬局で電話・情報機器等を用いた処方箋受付及び服薬指導体制構築(2020/4/22 クオールホールディングス)
https://ssl4.eir-parts.net/doc/3034/announcement3/57833/00.pdf

●「新型コロナの感染拡大防止」を目的とした、電話や情報通信機器を用いた診療による処方箋の対応について(2020/04/14 さくら薬局 クラフト株式会社)
http://www.kraft-net.co.jp/2020/0416-13114/

●新型コロナウイルスによる電話受診をお考えの方へ(ウエルシア薬局)
https://www.welcia-yakkyoku.co.jp/tel-jyusin/

●新型コロナウイルスにより医療機関への受診が出来ない方へ(スギ薬局)
https://www2.sugi-net.jp/info/20200420/pdf/0420.pdf

特集記事カテゴリの最新記事