新型コロナウイルス感染者が増加するなか、予防対策として、初診患者にもオンライン診療が解禁されました。オンライン診療の普及は薬剤師の働き方にどのような変化をもたらすのでしょうか。オンライン診療受診の体験談とともに考察します。
わずか10分程で受付から支払いまで。オンライン診療の流れ
今回オンライン診療を受診したクリニックは、オフィスや商業施設が並ぶビジネス街にあります。仕事帰りや、休日に買い物等のついでに立ち寄るのに便利な立地です。
夜間や週末の外出を自粛しているこの期間、オンライン診療のニーズが高まっています。元々診察のWEB予約ができるシステムを導入していたこのクリニックでは、4月の厚生局からの連絡に合わせ、オンライン診療のWEB受付もスタート。私もいつもと同じ薬の処方を受けるならオンラインで済ませたいと心待ちにしており、開始を知って早速予約しました。
オンライン診療の予約画面には、通常の来院予約項目にはない住所欄と、保険証の画像を添付できる項目がありました。予約の確定後、自動送信メールでオンライン診療用のURLが届きました。
オンライン診療のツールには、一般的なWEB会議用のサービスを利用していました。URLへのアクセスのみでミーティングに参加することができ、専用アプリのインストールやログイン等は不要です。
予約当日、時間になったらURLにアクセスし、名前を入力。PCへマイク・カメラの使用を許可をしたのち入室します。仕事やプライベートでWEBツールを使ったことがある方なら、スムーズに開始できます。オンライン診療専用のシステムではありませんが、手順通りの操作なので簡単です。
入室後はすぐに受付の方々と繋がり、名前や生年月日など本人確認の質問に答えました。診察料とは別に、診療明細と処方箋を送る送料実費(370円)がかかることの説明を受け、郵送先の住所と電話番号の確認をし、受付の方は退室されました。
その後、ほとんど待ち時間なくマスクをした医師が登場し、診察が始まりました。
医師は電子カルテを確認しながら、前回処方した薬で副作用がなかったかをヒアリング。現在の症状について対話し、今回処方する薬の内容や量を確認し、診察終了。再診ということもあり、オンラインルームに入室してから僅か6分の経過でした。
再度受付の方に代わり会計金額を聞き、7分間でオンラインミーティングが終わりました。
新型コロナ対策としては導入されたばかりのタイミングで受診しましたが、オフラインの診療と同様にスムーズに進行していきました。
診察が終わって4分後にはメールで決済のためのURLが届き、クレジットで支払い、翌日の16時前には処方箋と明細がレターパックで届きました。
実際に経験してやはり実感。オンライン診療のメリット
新型コロナウイルス感染防止のため、非常時の対応として時限的に条件が緩和されたオンライン診療ですが、実際に経験するとそれ以外のメリットも多く享受できます。
1.テレワークと親和性が高い
フルタイムで働いている方は、職場の近くや通勤途中の病院・診療所を利用している方も多いのではないでしょうか。電車通勤の会社員が自宅近くで診てもらう場合、毎週土曜日の午前中しか受診できない等といった制約がでてきます。職場近接の医療機関なら、平日の出勤前や昼休み、退勤後に利用できます。
しかし現在、外出自粛要請により在宅勤務が推奨されています。通院だけのために職場方面に行くのは、リスクがあるだけではなく時間も無駄です。オンライン診療を使って、リモートワークと同じ感覚でいつもの医師に診ていただけるのは安心です。
今後、オリンピック開催期間や、働き方改革推進にも、在宅ワーク・時差出勤とともにオンライン診療が有効かもしれません。
2.時短
わずか10分程度(診察内容による)パソコンやタブレット端末、スマートフォンの前に座っていればよいので、仕事の合間・家事の合間・子育ての合間などスキマ時間でも受診できます。
3.具合が悪いときに家にいたままでよい
特に初診の場合、病院に行きたいけれども動くのが辛い、どのタイミングで受診すべきか分からない、ということは多いと思います。初診時のオンライン診療が解禁されたことで、体調が悪くて外出できない時点でも診察が受けられます。必要な治療をすぐに開始でき、身体にかかる負担も減らすことができます。
初診解禁には不安も?オンライン診療のデメリット
日本で初診の解禁に時間がかかったのは、オンライン上のやりとりでは得られる情報が限られ、重症化の兆候を見逃すなど誤診の恐れがあるという意見からでした。今回の体験では受診内容や症状がはっきりしており、継続して処方を受けている薬であったため何も不安に感じませんでした。初診であっても軽い症状や重症化しない内容であれば、オンラインであっても直接の診察と同じような安心感を得られると思います。一方で、オンラインならではのデメリットも感じました。
1.検査ができない
医師の診察を受けるメリットは、自己判断の常備薬や、OTC薬での治療とは異なり、症状によっては検査を受けられることです。検査を実施しその結果を聞くことで安心感を覚えていた方にとっては、物足りなさを感じるかもしれません。
2.オンラインに慣れていないと難しい?
たとえば、体験記中でさらりと触れた「PCへマイク・カメラの使用を許可」というフレーズ。新型コロナウイルスが出現する以前から、プライベートでも ZoomやSkype、LINEビデオ通話を使っていた私にとっては、クリックするだけの簡単な操作です。普段あまりオンラインツールを使わない方にとっては、戸惑う手順かもしれません。
3.インターネット環境が必須
今や10代~50代の9割以上、60代の7割以上、70代の半数がインターネットを使う時代です。とはいえ、1番感染リスクが高い高齢者ほど、割合が減るのが現状です。
今回の特例措置には電話も含まれますが、顔が見えないとより情報が減ってしまいます。
世代別 インターネット利用状況
10代 | 96.6% |
20代 | 98.7% |
30代 | 97.9% |
40代 | 96.7% |
50代 | 93.0% |
60代 | 76.6% |
70代 | 51.0% |
80代~ | 21.5% |
(2019/5/31 総務省「平成30年通信利用動向 調査」より)
オンライン診療のメリットとデメリットをご紹介しましたが、これらのメリットを活かし、またデメリットを減らす上でも、受診後の服薬指導など、「薬剤師との接点」がポイントになりそうです。
次回の記事では、コロナ禍でのオンライン服薬指導の流れや、オンライン化で薬局・薬剤師がどう変わるのかについて考察します。
コロナ禍のオンライン診療解禁から考える薬剤師の職能発揮2 ~オンライン服薬指導~
参考:
内閣府 平成30年版高齢社会白書(全体版)
第3節 <視点2>先端技術等で拓く高齢社会の健康(3)ー 3 インターネット・リテラシー
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_3_2_3.html
総務省 平成30年通信利用動向調査(世帯編)
第7章 個人のインターネット利用状況
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/pdf/HR201800_001.pdf
画像はイメージです
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